【第4章 量子コンピュータの夜明け】
トランジスタの発明と進化により、コンピュータの小型化が進み、現代社会に革命をもたらしました。しかし、この技術には限界があり、シリコンの微細化が限界に近づくにつれ、新たな技術が求められるようになっています。その答えが、量子コンピュータです。
【トランジスタの誕生と役割】
・トランジスタは1956年、ジョン・バーディーン、ウォルター・ブラッテン、ウィリアム・ショックリーによって発明され、ノーベル賞を受賞。
・この小型デバイスは半導体の特性を活用し、真空管に代わるコンピュータの核心部品となった。
・トランジスタの製造は紫外線と化学薬品を用いるリソグラフィ技術により行われ、1枚のシリコンチップに10億個以上が配置可能。
・しかし、微細化が進むと物理的な限界により、電子の漏電や熱の問題が発生する。
【量子の時代とファインマンの先見】
・リチャード・ファインマンは、小型化の極限にある新しい計算技術として量子コンピュータの可能性を提唱。
・彼の経路積分の理論は、量子力学を基礎から再解釈し、古典的なニュートン物理学と量子物理学をつなぐ革新的な方法論を提供。
・経路積分では、粒子がとりうるすべての経路を考慮し、その寄与を足し合わせて現実の経路を導き出す。
【量子コンピュータの理論的基盤】
・量子コンピュータの基本概念は、オックスフォード大学のデイヴィッド・ドイチュによってさらに発展。
・量子ビット(キュービット)は、0と1の重ね合わせ状態を持ち、計算能力を飛躍的に向上させる。
・ドイチュは量子チューリングマシンの理論を提唱し、量子コンピュータの動作原理を数学的に定義。
【多世界解釈と哲学的影響】
・ヒュー・エヴェレットの多世界解釈は、量子状態の収縮を否定し、すべての可能な状態が同時に存在する並行宇宙の概念を導入。
・この理論は、量子コンピュータが複数の並行宇宙で同時に計算を行うというアイデアを支える。
【ショアのアルゴリズムと暗号解読の革命】
・1990年代、ピーター・ショアが提唱したアルゴリズムは、量子コンピュータがRSA暗号を短時間で解読可能であることを示し、世界中のセキュリティに衝撃を与えた。
・古典的なコンピュータでは膨大な時間がかかる素因数分解を、量子コンピュータは効率的に解決可能。
・この発見により、量子セキュリティ技術の研究が加速。
【量子暗号と未来のインターネット】
・量子鍵配送(QKD)は、通信を傍受した場合に即座に検知可能な技術として注目される。
・レーザーを活用した新しい通信ネットワークが開発されつつあり、将来のセキュリティの基盤となる可能性。
【量子技術の将来】
・量子コンピュータは、現在の技術の限界を超える計算能力を持ち、医療、金融、材料科学など多岐にわたる分野で革新をもたらす可能性がある。
・同時に、セキュリティや倫理的課題への対応も必要。
この章では、量子コンピュータの起源から現在の発展、そしてその未来への可能性が描かれています。量子技術は、物理学、計算技術、そして哲学的な探究において新しい地平を切り開いており、その影響は計り知れません。