ミチ・オカク「量子超越」5章 レースは始まっている

 

量子コンピュータ開発競争が世界的に激化しており、シリコンバレーの大物たちは勝者を見極めようとしています。量子コンピュータは、情報の「0」と「1」の重ね合わせや絡み合いを利用して計算を行う装置で、設計の多様性が競争の焦点となっています。以下、主要な設計方式とその特徴を整理しました。

1. 【超伝導量子コンピュータ】
・絶対零度近くに冷却された環境で動作し、高い計算能力を誇る。
・デジタルコンピュータの既存技術を活用可能であり、拡張性が高い。
・課題として、冷却装置の高コストや振動によるエラーのリスクが挙げられる。
・現在、IBMが「オスプレイ」(433キュービット)や「コンドル」(1121キュービット)を開発中。

2. 【イオントラップ型量子コンピュータ】
・正電荷のイオンを電場や磁場で宙吊りにし、レーザーを用いて操作。
・超伝導方式に比べ高温で動作し、干渉時間が長い。
・スケールアップが難しく、干渉性維持のための調整が複雑。

3. 【光量子コンピュータ】
・レーザー光の偏光を利用して計算を実行。
・常温で動作可能で、エラー率が低い。
・物理的な設計が大きく、計算後に部品配置を変更する必要がある。
・カナダのスタートアップ「ザナドゥ」が小型チップ型光量子コンピュータを開発。

4. 【シリコンフォトニクス・コンピュータ】
・シリコンを利用した光子操作で計算を行う。
・既存の半導体技術を活用できる点が利点。
・スタートアップ「プサイクォンタム」が100万キュービットの実現を目指している。

5. 【トポロジカル量子コンピュータ】
・特殊なトポロジー性質を持つ物質を活用して常温動作を実現。
・研究が進行中で、安定性とコスト削減が期待されるが、具体的成果は未確認。

6. 【D-Waveの量子コンピュータ】
・量子アニーリング方式を採用し、最適化問題に強みを持つ。
・5600キュービットのマシンを実用化し、大手企業が導入。
・最適化問題に特化する反面、一般的な量子計算能力は限定的。

【現在の課題】
量子コンピュータは、現実世界の問題解決への適用が目標です。例えば、生命の起源や光合成の仕組み解明、不治の病治療などが期待されています。各企業が数十億ドルを投じているこのレースで、どの設計が実用性と効率性を兼ね備えるかが未来を左右します。