ミチ・オカク「量子超越」12章 AIの活用と難病の治療(要約)

【第12章の要約】

・【人工知能(AI)と量子コンピュータの融合】
1956年のダートマス会議で誕生した人工知能分野では、機械が言葉を使い、抽象的な問題を解く未来が夢見られていた。しかし、AIは複雑で多様な道筋を持つ課題であり、進歩が予想以上に難航。
AI研究が停滞した理由の一つは、トップダウン的な設計に偏り、生物が持つボトムアップ的学習を見落とした点にある。AIと量子コンピュータを組み合わせれば、AIの能力を大幅に拡張可能と期待されている。
AIは学習機械として、試行錯誤を繰り返して常識や新しい能力を身につける。一方、量子コンピュータはその計算能力でAIを支える。

・【タンパク質の折りたたみ問題】
タンパク質の形状は機能を決定し、病気の解明や薬の開発に重要。現在、AIを活用したディープラーニングで、X線結晶構造解析に匹敵する精度でタンパク質構造が予測されるようになった。
例えば、グーグル傘下のディープマインド社が開発した「AlphaFold」は、約2億ものタンパク質構造を明らかにした。今後、量子コンピュータで分子レベルの分析を行えば、完全なタンパク質構造とその機能の解明が可能になり、新薬開発や環境浄化にも応用できる。

・【量子コンピュータによる難病治療】
量子コンピュータがターゲットとする難病には、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などが挙げられる。
1. **アルツハイマー病**:異常なアミロイドタンパク質が原因とされる可能性が高い。このタンパク質を特定し、その異常構造を修正または排出する薬が開発される可能性がある。
2. **ALS**:SOD1遺伝子の異常が神経細胞を損傷する原因とされ、量子コンピュータで分子構造を解明すれば、新たな治療法の糸口が得られる。
3. **パーキンソン病**:関連する遺伝子とタンパク質を量子コンピュータで解析することで、病気の進行メカニズムを理解し、治療方法の開発が期待されている。

・【老化と量子コンピュータ】
老化は医学的に最大級の課題であり、老化に伴う病気の治療も量子コンピュータによる分子レベルの解析で進展が見込まれる。最終的には、老化そのものを治療し、人類の寿命を大幅に延ばす可能性が議論されている。