【核融合の可能性と利点】
・核融合は、太陽のエネルギー生成と同じプロセスで水素をヘリウムに変換し、膨大なエネルギーを放出する。
・核分裂発電と異なり、放射性廃棄物がほとんど生じず、メルトダウンのリスクがない。また、燃料である水素は海水から供給可能で、二酸化炭素も発生しない。
・1グラムの重水素は11トンの石炭に匹敵するエネルギーを生成できる。
【核融合炉の仕組みと現状】
・核融合には1億度以上の高温プラズマが必要で、トカマク型炉は磁場でこのプラズマを閉じ込める技術を採用。
・ITERプロジェクトをはじめ、各国が協力して商用核融合発電の実現を目指している。ITERは2025年の試験稼働を計画し、最終的に2035年のフル稼働を目指す。
・核融合炉の効率を示すQ値(生成エネルギー/消費エネルギー)は、ITERで10を目標に設計されている。
【核融合が遅れる理由】
・プラズマの不安定性や磁場の精密な制御が課題。高温プラズマの閉じ込めは、トカマクの構造がもたらす課題を克服する必要がある。
・これまで100を超える核融合炉が試みられてきたが、実用化には至っていない。
【新しいデザインと技術の進歩】
・高温超伝導体を用いた新しい技術(SPARCプロジェクトなど)は、コスト削減や効率向上に寄与。
・中国のEAST(全超伝導トカマク型核融合実験装置)や英国のJET(欧州共同トーラス)は近年、核融合の持続時間や温度の記録を更新。
【レーザー核融合の可能性】
・NIF(国立点火施設)はレーザーを用いて核融合を試み、2022年には初めてQ>1を達成。
・レーザー核融合では、ペレットに集束したレーザーでプラズマを生成し、エネルギーを抽出。
【量子コンピュータの役割】
・量子コンピュータは、核融合炉設計の課題解決に寄与。複雑な磁場やプラズマの相互作用を計算し、最適なデザインを模索できる。
・人工知能(AI)と組み合わせることで、設計や運用の効率をさらに向上。
【核融合がもたらす未来】
・核融合発電が実現すれば、クリーンで持続可能なエネルギー源として地球温暖化を抑制可能。
・長期的には、核融合炉が地球上のエネルギー消費の在り方を根本的に変える可能性がある。
【課題と展望】
・核融合の商用化には技術的・経済的な課題が多く、2050年以降の本格普及が見込まれる。
・量子コンピュータやAIによる支援が進むことで、技術革新とコスト削減が期待される。
・核融合発電の実現は、環境問題解決だけでなく、科学の新たなフロンティアを切り開く鍵となる。